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小話的な突発。
逆か。突発的な小話。 死ネタなので(?)注意(?) 夏の終わりはせつないです。 そして相変わらず眠い。 (携帯からみると投稿時間が出ちゃうんですよ)
そんな風に夏が終わるのは昔から知っていたことだった。
蝉は焼けたアスファルトに落ちるし、朝顔の葉は枯れ落ちるし、優しくしてくれる人とは別れなければいけないのだった。 「元気でね」 そう微笑んでくれた人はもう、どこにいるのかすらわからなくて。 「すみませんでした」 そう頭を下げた奴は、春に『結婚しました』と一行だけ書いた葉書を送ってきた。 だから、そう。 「じゃあ、今日でもうお別れですね」 カフェでコーヒーを頼むよりも気軽な調子で隣の男が笑った時も、明彦は軽く頷いただけだった。 「さよならだ」 「ええ、真田さんは、お元気で」 「お前もな」 「いえ」 奇妙にゆがんだ調子で発せられた言葉に、眉をひそめると視線を投げる。 男は、四六時中貼り付けている対外用の笑顔を向ける。 「いいえ、僕はもう死にます」 「何を言っているのか、わからない」 唇だけで返した言葉に、男は一層笑みを深める。 「僕はもう不要になりました。ですから、僕は死にます。あなたはどうか、お元気で」 向きなおった明彦は頭の半分で、目の前の男が誰か思い出そうとする。 残りの半分は空虚な言葉を紡いでいる。 「そうですね、不要というのは語弊があるかもしれない」 「いいかえるなら、もうすることがないのです」 「僕にはもう主がいない。そして残された時間もない」 薄色の毛先が、耳の横で陽光をはねる。 「すみません、真田さんがそう言ってくれるのはうれしいけれど」 「さようなら、僕はもうゆきます」 電子音に我に返るとそこは見慣れた自分の部屋。 自己主張する携帯電話を耳に当てると、聞きなれた声がもどかしげにゆれる。 「戌井です。うちの犬、そちらにお邪魔していませんか」 眼尻に溜まっていた雫が一粒、音もなく落ちた。 PR |